日本に住んでいる日本人には日本語学校はあまり馴染みがないものかもしれません。
実際「日本語学校で働いている」というと、「何を教えているの?」「誰に教えるの?」という質問をされます。
また、「日本語教師だ」というと、「英語ができるんだね」と言われることも多いです。
まず、日本語学校というのは、日本語を母語としない外国人に日本語を教える学校のことを言います。学校法人によって設立された学校もありますが、大半は株式会社など民間の企業や個人によって設立したものになります。
日本人学校とよく混同されますが、日本人学校とは海外に住む日本人の子供たちに日本の小中学校と同様の教育を受けさせる学校で、日本語学校とは別のものです。
法務省により告示を受けた日本語学校に入学する外国人は「留学」の在留資格を付与されます。2024年5月現在、告示を受けた日本語学校は日本全国各地に約870校あります。
日本語学校以外にも日本語教育を行っている機関はあります。専修学校に設置されている日本語科や、私立大学や短期大学が外国人留学生へ準備教育のために設置している留学生別科などです。
日本語学校の中でも入管によりカテゴリーが分けられています。地方によって呼称が異なりますが、東京では適正校(クラスⅠ)、適正校(クラスⅡ)、適正校以外の3つのカテゴリーがあります。適正校以外の学校は新規開校の学校も含まれ、留学生に発給される在留資格「留学」の満了期限が最長で半年と短く、入管での手続きも厳しいです。適正校(クラスⅡ)になると手続きも若干緩和され、適正校(クラスⅠ)の学校は手続きが非常に簡単になります。
新規校の利点はゼロからすべてを作り上げていくことになるので、日本語学校勤務経験者には面白いかもしれません。ただし、新規校は「留学」の満了期限が短かったり、入管へ提出する資料が多かったりするため、学生を紹介するエージェントや留学希望者本人から敬遠される傾向にあります。新規校は資料が何もない状態から作り上げる必要があるので、大変なことも多いです。逆に適正校(クラスⅠ)の学校でしたら、すでに様々なことが決定されており、新人教育等もしっかりしていることが多いので、未経験者には安心かもしれません。
一見似ているようでも各学校に様々な特色があり、学校のカラーがあります。学校のホームページを見てみたり、学校によっては校内を見学させてくれる学校もありますので、可能であれば実際に学校に出向いて雰囲気を感じてみると良いでしょう。
例えば、学校では教室での授業とは別に課外活動を行っており、学校によって実施頻度や内容が異なります。具体的には、毎月行うこともあれば、数か月に一度で、内容としては書道や華道などを行う学校が多いです。そこに非常勤講師が参加を求めている学校もあれば、参加しないでよいところもあります。
使用教材も様々です。未経験の方ですと養成講座で使用した教材を使用している学校であれば、スムーズになれることができるでしょうし、スキルアップには使用したことのないテキストを使用している学校へ行ってみるのもよいです。
授業は紙の絵カードを使用し、板書を行うという学校がまだまだ多いと思いますが、タブレット使用が義務づけられている学校もあります。教材は紙ベースではなく、パワーポイントを使用するよう決められている場合もあります。
また、在籍者の国籍に偏りなく様々な国籍の学生がいる学校もあれば、ある国籍に絞って受け入れている学校もあります。ここ数年はベトナム、ネパールからの学生が多く、どの学校も在校生の大半がこの2か国からの学生という状況をよく見かけます。これらの国は留学希望者が多いので、こちらから募集をしなくてもたくさん集まるので、自然にそういった状況になります。他に多い国籍はフィリピン、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、中国などです。最近は「中国」の学生に特化した学校も多いです。日本の大学など高等教育への進学を目指した中国の学生たちが集まる塾のような日本語学校です。
ちなみにクラスでの授業は様々な国籍の学生がいるため、簡単な日本語(ティーチャートークという)で教えることが必須です。必ずしも英語など多言語が話せる必要があるわけではありません。
このように、一言で「日本語学校」と言っても様々な学校があり、運営方法や方針、教え方や課外活動の頻度など多種多様です。日本語教師としては教え方や教育に対する考え方が賛成できないものだとやっていくのが難しいこともあるかもしれません。先述した通り、実際の雰囲気などはわからないことが多いですので、実際足を運んでみてご自身に合った日本語学校を選んでください。
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